税務調査の実体験レポート
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税務調査の実体験レポート
顧問税理士から「税務調査官がこんな証拠を見つけたのでもう観念するしかない」と言われ、それでどうなるのかと尋ねると「数千万円の追徴がきて、支払いできない場合は自宅を含む財産の全てを差押えされることになる」と宣言されました。
個人的にスナックを経営して現在25年、今から約3年前に通知がきて税務調査を受けた時の話です。
数千万円もの大金があるはずもないので、怖くなってすぐに調べてみました。
★知識1
追徴課税された金額を支払いできない場合は財産の差し押さえ(強制執行)が実施されます。
売掛金、給与
金融資産(預金口座、株、債権)
不動産(土地、建物)
動産(自動車、高価な家電)
生命保険(解約返戻金)
不動産などは、競売にかけられて相場よりもかなり安い金額で落札されるようです。
民事の差し押さえと違って、裁判することなく財産の差し押さえを実行でき、法律上(地方税法第331条)は、催告状を送付して10日以内であれば、いつでも財産の差し押さえが実行できるとされています。
また、追徴課税の納税を先送りにしていると、罰金として年利7.3〜14.6%の延滞税が発生しますので支払いがどんどん難しくなっていきます。
普通に考えれば自己破産!なのですが、税金(所得税、住民税、固定資産税、相続税、消費税、追徴課税など)は、非免責債権のため、原則、自己破産しても支払いを免除されることはありません。
提出した資料は、銀行通帳のコピー、月別にまとめた売上伝票、パソコンに実績入力した結果をプリントした日別の売上集計表、同じくパソコンで集計した経費の一覧表と、1年分を袋詰めにした領収証、スタッフの賃金台帳と勤務管理表です。
資料を預かって良いかと聞かれたので、どうぞと答えて全ての資料を持ち帰ってもらいましたが、後で聞くと持ち帰りを拒否することもできるようです。
税務申告が正しく行われているかの調査であって、脱税容疑者の強制捜査ではないということのようです。
★知識2
良かれと思って銀行通帳のコピーを用意しましたが、税務調査の開始時点で既に、お店名義のものだけでなく全ての銀行口座の情報を入手しているそうです。
当然のことながら振込みの事実に見合う売掛伝票が存在しているかどうかは早い段階でチェックされていました。
・ 土曜日にも関わらず女性スタッフが勤務しているのに売上がゼロなのはおかしい。
・ カード会社の情報では決済された事実があるのにその日の売上伝票が無い。
などの指摘を受けたことには驚きました。恐ろしいくらいに緻密な調査能力です。
最初の段階で、まずは売上の申告内容を徹底的に調べるのでしょう。売上伝票と売上台帳、売掛台帳、銀行への入金の履歴、クレジットカードの決済履歴が全て合致していないと必ず指摘されることが分かります。
当時は既に、スナックの営業を店長に任せていましたので、数日分の売上を現金出納帳にまとめて管理させていました。2~3日に1回程度、売上伝票と現金を受け取ります。
受け取った売上伝票をパソコンに入力して結果をプリントし、現金出納帳の内容に誤りがないことを確認して、問題無ければ用済みの現金出納帳は廃棄していました。
税務調査は売上のチェックを終えて、経費のチェックに入ったのでしょう。
領収証もパソコンで経費集計していたので、パソコンへの入力が済んだ領収証は無造作に袋に放り込んだものを税務調査官に渡していましたが、その袋から廃棄していたはずの現金出納帳が出てきました。
しかも売上申告している数字よりも、現金売上の金額が20万円以上も多かったのです!
これこそが、冒頭で記述した観念するしかない決定的証拠です。
それまでは善良な税務調査への協力者だったのに、あっという間に脱税の容疑者になってしまいました!
★知識3
話は前後しますが、税務調査官はコンピュータの帳簿を苦々しく思っていることがその話ぶりで分かります。
会計ソフトを使っての申告が一般的になっているので、コンピュータの帳簿を決して否定することはしませんが、思いっきり疑っていることは間違いありません。
何故なら、いとも簡単に改ざんすることができるからです。
エンピツよりもボールペンで記述された、差し替えが効くルーズリーフよりも大学ノートを信頼するでしょう。
売上を下げる為に売上伝票を間引いた後、ノートなら改ざんした痕跡が残りますが、コンピュータには残りません。
私が提出したパソコンから出力した売上集計表と売上伝票はピッタリと一致していました。
最終的に売上の整合性を突き崩すことができなかったのです。
悔しい思いで経費のチェックへ移ったら、本当に見たかった手書きの現金出納帳がみつかりました。
もし自分がその立場なら「ヤッターーーーー!」と叫んだと思います。
顧問税理士から、税務署の見解を聞きました。
証拠隠滅を図ったにも関わらず意図せぬミスで現金出納帳を残してしまったようなので、現金出納帳に記録された売上が正しい売上だと推測し、同様の隠ぺいが過去数年に渡って行われたものとして、所得を算出して追徴することになります。
なんと!1週間で20万円以上の現金の所得隠しを常態化していたというのです。
つまり、20万円×52週間で1,040万円を過去7年間に渡って隠し続け、所得総額7,280万円を過少申告したということです。
意図的に隠ぺいしていますから重加算税も加えられます。古い年度の追徴税には延滞税も加わります。
ということで「数千万円の追徴がきて、支払いできない場合は自宅を含む財産の全てを差押えされることになる」わけです。
★知識4
税務署は、脱税の事実の全体像を全て把握しなくても、発見した脱税の事実を元にして所得の全体を推測して所得額を決定することができます。
今回のケースでは20万円程度の証拠を見つけただけですが、他の証拠は既に隠滅されているので見つけることは不可能であり、論理的な推測値で計算するしかないということです。
一見、理路整然としていますが、内容は事実と異なっていて無茶苦茶です。
反論してみましょう!
その20万円はたまたまであって普段はそんなに無い。
本当にあったらもっと良い車を買って乗っているはず。
とにかく絶対に無いものは無い。本当に無い。
そう何を言っても通用しません。本当に無いものを無いと証明することは想像以上に難しいのです。
この辺りで実際に起こったことと、その結末をまとめに入ります。
店長の報告が2~3日に1回あることは既に説明しましたが、問題の現金出納帳の期間に報告が先延ばしされ続けて1週間になったので、叱りつけてオフィスに呼んで理由を問いただしたところ、いつもより多い現金が手許にあったので、ギャンブルに手を出したそうです。
取り返そうとして更にギャンブルしたか金策したかはわかりませんが、どうして良いかわからないうちに1週間が過ぎてしまい、怒りの呼出しに観念して全てを自白しました。
自白してスッキリしたのか、売掛金を現金で回収したお金を使い込んでいることも話しました。
結局は解雇することになったのですが、その時の証拠として現金出納帳を保存していたものが、税務署に指摘を受けた現金出納帳です。
絶対に回収できない売上伝票ですから、売上として登録する気にならず所得申告していませんでしたので、現金出納帳との差額が20万円も出てしまった訳です。
調査対象となったのは当時でも既に3年前の話でしたので、自分自身がすっかりその事実を忘れていたので本当に最初は意味がわからず混乱し、自分が使ってしまったのかと焦り、税務署の方針を聞いて真っ青になって、心の底からの恐怖を感じました。
この事実を税務署に伝える為に、解雇した元店長に連絡を取って自供書にサインしてもらい、現金出納帳との筆跡鑑定用に手書きの文字を記入してもらったり、当時本当に店長をしていた際のフェイスブックの画像を添えたりしました。
私自身の正義を正攻法で主張し数千万円の追徴は回避することができましたが、結局この20万円と回収不能だと判断して取消した売掛金分の売上が過少申告だと判断され、過少申告所得に対する所得税、延滞税に加えて、修正後の売上が1,000万円を超えた為、翌年度以降の消費税が追徴されることになりました。
★知識5
従業員が不正に着服した売上金が経営者の手元に届いていない場合でも、売上の事実が発覚した場合はお店の売上として計上しなければなりません。
経営者が全く知らないところで金銭の受領を行い、従業員が勝手に領収証を発行していた場合でも同様のことが起こります。
発行する領収証は必ず複写式のものを使用し、使い終わった場合でも領収証の原本を手許に保管する必要があります。複写式にすることで不正の抑止力になるのに加えて、複写された領収証以外はお店のものではないと言い切ることができます。
そうならないように気をつけたつもりですが、税務調査員を悪者扱いするつもりは少しもありません。
税務調査の目的は正しい税務申告を促すことであって、正しい税務申告が行われないと不公平だからです。
サラリーマンの給料はガラス貼りと言われるように、その所得と納税は全て法人によって厳しく管理されています。
法人の納める税金にサラリーマンの税金を加えた収入で国が運営されて我々は社会生活をおくっています。
一方、個人事業者の所得は曇りガラスどころかブラックボックスに近い状態なので、誰も見ていない時にどういう行動をとるかの人間性に納税が委ねられています。
申告納税方式は明らかに性善説に基づいていますが、悪意をもって対処すれば抜け道がいくらでもあることも事実です。
悪意に対しては厳罰をもって対応することは★知識1に記述しました。
ただ、悪意と無知の境目があやふやであることと、厳罰を適用するにも調査の実施率が低すぎることが懸念されます。
赤信号、みんなで渡れば怖くない、けれども100人のうち3人くらいは交通事故にあうことになります。
赤信号は絶対に渡ってはいけないと、税務署は言います。
それでも渡ってしまう個人事業者の心理を理解した上で、当社にできることがたくさんあります。
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その代りに税理士にはできない相談に乗ることや、アドバイスを行うことができます。
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